市民のおよそ100人に1人がベトナム人という兵庫県丹波地域。丹波市柏原町柏原に、ベトナム食材スーパー「ラ・カ・クァン・タンバ」がオープンした。オーナーのベトナム人が、丹波で暮らす同胞に故郷の味を届けようと開いた。野菜、果物など生鮮食料品が一部あるほか、魚、肉、果物など冷凍食品が充実。インスタント食品、調味料も豊富で、「何でもそろう。故郷で食べていた料理が作れる」と喜ばれており、在留ベトナム人の心のオアシスになりそうだ。
一昨年、同県加東市に住むベトナム人兄弟が同市に開いたスーパーに、丹波地域から車で買いに来る客が多く、2号店を丹波市に設けた。
商品は主に現地からの輸入。フォー(米麺)、春巻き用ライスシート、バインミー(パン)、ニョクトゥ(しょうゆ)などの一般的な物のほか、生ものでは、ミルクが詰まったココナッツ、塩をかけて食べる青いマンゴー、コリアンダー、パクチーなどの香菜などが並ぶ。現地で親しまれる、ふ化寸前のアヒルの卵をゆでた「バロット」も。
冷凍は、筒切りしたウナギ、ソウギョ、骨を抜き開いて味付けした鴨、豚の内臓各部位、鶏、牛などのほか、ドリアンや冷凍カイコも。日本にはない、米と炊く赤い果物「ガック」といった珍しい食材が並ぶ。
調味料やインスタント食品では、「クノール」「味の素」「エースコック」など、現地で定着した日本企業現地法人の商品もある。
正月に欠かせないベトナム風ちまき「バインチュン」の真空パックや、ちまきの皮になる生のバナナの皮を季節商品として置いている。
特定技能実習生の夫と3歳の子どもと暮らすジュティー・ホワイ・チャンさん(26)=同県丹波篠山市=は、頻繁に加東店に通っていた。「作るのは80%がベトナム料理。食べたくなったら、すぐ作れる。うれしい。超便利」と喜ぶ。インターネット上で数多の食材が売られているが、詐欺的なサイトも多く、目で見て、手に取って選べる安心感があるという。
店舗責任者で、ハノイの北隣の町出身のブイ・バオ・カンさん(30)は、「今はベトナム人にしか知られていないけれど、ベトナムのことが気になっている日本人にも来てもらえたら。おいしい春巻き作れますよ」と笑っていた。
営業は、平日は午後5―8時、土・日曜は午前10時―午後8時。価格表示は日本円。店員は日本語堪能。柏原本町信号から中兵庫信金柏原支店に向かって右手。
昨年12月末時点で丹波市に559人、丹波篠山市に457人が暮らしている。外国人に占めるベトナム人の割合は、丹波市が約45%、丹波篠山市が約43%で、国籍別で共に最多。技能実習生、特定技能実習生などとして企業で働いている。