大工や造園など建築に携わる職人の養成施設、篠山技能高等学院が1月21日―3月10日の間の8日間、左官技術の伝承を目的に伝統工法を学ぶ講習会を同学院(兵庫県丹波篠山市宮田)で開いた。丹波篠山市左官技術研究会員で同学院左官科講師の人見正美さん(70)=同市=の指導のもと、7人の受講生が、建築基準法や左官関連法規などをはじめ、こての選び方や動かし方、壁塗り材の下地や漆喰の作り方、塗り方など、左官の伝統工法のいろはを、実技を交えながら学んだ。多可町や綾部市、遠くは岐阜県や愛媛県などからの参加もあった。
最終回の10日は、同市春日江で採集した赤っぽい土を主原料に、伝統工法「のり土」の壁塗り材を作って壁塗りを体験した。
のり土は、土を精製してこしらえた粘土に、水、海藻糊、珪砂、すさなどを混ぜ合わせたもの。人見さんは、建築材とは思えないほどに、材料の配合比率、砂や土の粒度、粘度に細かくこだわり、「仕上がりに大きな影響が出るので、材料作りには時間をかける」と注意を促していた。完成したのり土を使って壁塗りをする際には、「力を込めて塗るのではなく、こての重さを感じながら手を動かす」などとアドバイスを送っていた。
また、課題の一つで、「色漆喰磨き工法」などの左官の技術を駆使して作った卓上サイズのかまどの火入れ式も行い、受講生たちは自分で作ったかまどでご飯を炊いて食べた。
大阪から兵庫県多可町に移住した受講生の女性(37)は、現在、購入した古民家を自らの手で改修中。「新建材ではなく、土壁など日本の伝統工法でリフォームしたくて受講した」と話し、「これまでは、土や砂を練って壁を塗ったらいい、というくらいに考えていたが、左官の世界の技術を学んでみて、あまりの難しさと奥深さに、今はただただ驚いている」と苦笑いしていた。