元気の秘訣はシューベルト
30周年を迎えた「丹波の森国際音楽祭 シューベルティアーデたんば」で、音楽監督を務めるとともに、今年はテノール歌手としてシンボルアーティストも務めている。毎年、自ら交渉して招いてきた海外アーティストと、各地域の実行委員会が開いてきた「街角コンサート」が、同音楽祭の個性となっている。
「丹波の森とウィーンの森が友好親善提携」という新聞記事が目に留まったのが企画の発端。「シューベルトは生粋のウィーンっ子。シューベルトにちなんだ音楽祭を、ふるさと丹波でできないかという思いが浮かび、居ても立ってもいられなくなった」。当時の貝原俊民県知事が背中を押してくれ、開園を翌年に控えていた丹波の森公苑のプレオープン企画として第1回の開催が決まった。
シューベルトとの出会いは高校時代。兄が買ってくれた歌曲集のレコードを聞いて大好きになった。鳳鳴高校ブラスバンド部でクラリネットを担当していたが、顧問の勧めで声楽の道へ進み、以来、シューベルトに取り組み続けている。今年8月には、シューベルトとつながりの深い、ウィーンのヒリテンタール教会で洗礼を受けた。教会でリサイタルも開き、「シューベルトがより近くなった実感がある」と語る。
コロナ禍で、集まって音楽を楽しむことが制限された折、自宅で毎日、シューベルト歌曲のピアノ弾き歌いを始めた。歌曲集「冬の旅」と「美しき水車小屋の娘」を交互に歌っているという。「指も動かすので、より脳の刺激になり、健康にもつながっている。元気の秘訣はシューベルトかも」。丹波篠山市瀬利出身、69歳。