県立人と自然の博物館 (三田市) は2月4日、 篠山市宮田の前期白亜紀 (約1億1000万年前) の篠山層群下部層から発掘されたトカゲの化石が、 下あごの形態から新種であることが判明したと発表した。 同化石産出場所を発見した足立洌さん (71) =柏原町南多田=にちなみ、 「パキゲニス・アダチイ」 と名付けられた。 「パキゲニス」 は、 ギリシャ語で 「厚い下あご」 の意。 国内のトカゲ化石では4例目という。
写真・新種と決定づける特徴のある 「パキゲニス・アダチイ」 の下あごの化石(写真上)と、「パキゲニス・アダチイ」 の生体復元図 (C・小田隆/丹波市)
新種と判断されたのは、 2007年11月の調査で見つかった右下あご (歯骨) の化石 (長さ約2・6、 高さ約1、 厚さ約3) で、 9本の歯 (高さ3―5、 幅0・8) が付いている。
通常のトカゲと比べ、 歯の位置があご前方に偏っており、 数が極端に少なく、 大きいという特徴が、 中国で報告されているトカゲ類 「パキゲニス・セラステッサ」 と類似しており、 同属と見られるが、 歯の先端の形状が長方形をしているのに対し、 「アダチイ」 は尖っていることから、 新種と決定づけた。 全長は70ほどという。
研究者の間で、 前期白亜期におけるユーラシア大陸と日本のトカゲ類の近縁性が議論されていたが、 それを裏付ける化石が見つかっていなかった。 今回、 同属の化石が見つか
ったことにより、 近縁性を明確に裏付けた。
論文は1月27日、 古脊椎動物学会の国際学術雑誌に掲載された。 執筆者の一人、 同館の池田忠広研究員は、 「アジア圏域におけるトカゲ類の進化をたどる貴重な資料」 としている。
足立さんは、 「本当に小さな生き物の化石が、 新種と同定できるほどのよい状態で見つかり、 篠山層群のすばらしさを改めて感じることができたのがうれしい」 と話している。
篠山層群で見つかった新種は、 真獣類 「ササヤマミロス・カワイイ」、 竜脚類 「タンバティタニス・アミキティアエ」 (丹波竜) に次ぐ3例目。
同館は11―4月5日、 標本や拡大模型、 パネルなどを展示する。
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