「人頭蛇身」異形の神 とぐろの上に老翁の頭 和田寺の宇賀神

2025.01.21
丹波篠山市地域歴史

和田寺で秘仏として祭られている宇賀神像=兵庫県丹波篠山市今田町下小野原で(提供)

あなたは、「人頭蛇身」の異形の神「宇賀神」を知っていますか―。兵庫県丹波篠山市今田町下小野原の古刹、和田寺(わでんじ)に、頭部はおじいさんの形ながら、体はとぐろを巻いた蛇という宇賀神が祭られている。また、この宇賀神像が作られた約360年前のちょうどその頃、同寺で蛇にまつわる不思議な出来事が起こったとされ、その内容をつづった板札が伝わっている。武内泰照住職(56)は、「不思議な出来事を受けて宇賀神を祭るようになったのかどうか、その関連性は不明だが、古くから祭ってきたのは確か。現在も毎朝、水を替え、真言を唱えて大切にお祭りしている」と話している。

同寺の宇賀神像は、高さ8センチほどの小さな木像で、白く塗られた蛇身に、髪を頭頂部で結い、きりりとした表情の老翁(ろうおう)の頭が乗せられている。江戸・寛文年間(1661―73年)の作と伝わる。秘仏のため、公開はしていない。

不思議な出来事 記した板札残る

蛇にまつわる不思議な出来事が書き記された板札と、それを手にする武内住職=兵庫県丹波篠山市今田町下小野原で

同寺には、1665年夏に起こった蛇にまつわる不思議な出来事を書き記した板札が伝わる。縦39・5センチ、横21・5センチ、厚み9ミリの黒ずんだ板札を前住職の故・武内普照さんが同寺の蔵から発見。表面に墨で書かれた古文書を解読した。当時、同寺に住んでいた慈光院阿闍梨頼山と中蔵坊頼顕という2人の僧が連名で書き記したものという。

話の内容はこうだ―。

お社がつぶれて百年余りがたち、敷地だけが残っているが、頼尊という和田寺住職が寛文5年(1665)の夏、再興を発願し、人に命じて神殿の敷地を掘らせていると蛇が出てきた。頼尊住職が蛇に向かって白い紙をささげ、「もしあなたが弁才天に姿を変えた化身であるならば、この紙に乗り移ってください」と語りかけた。すると蛇は即座に紙に乗り移り、身を丸めたので、その場に居合わせた人々は皆、礼拝した―。

近年も蛇にまつわる不思議な出来事が起こっている。

1996年夏、同寺の参道工事が行われていた際、教育委員会の職員たちが発掘調査をしていると、本堂下の参道をするすると移動するツチノコを見かけたというのだ。

武内住職は、「蛇は気持ちが悪いという人も多いが、古来より信仰の対象で、畏怖も敬愛もされてきた存在。単なる生き物ではなく、神格化された縁起物とも感じる」といい、「蛇にまつわるいくつかの伝承が残る和田寺は、蛇に守られているような気がする」とほほ笑んでいる。

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