2011.11.12
丹波春秋

 月は仲秋より晩秋、11月が良い。皓皓とした明りのもとで親しむ書は、冴え冴えと脳にしみる。いま読んでいるのは「もしも月がなかったら」(ニール・F・カミンズ著、東京書籍)。▼月を持たない地球(著者は「ソロン」と呼ぶ)はその分、潮の干満が弱い。太陽からの引力が強く8時間で自転するので風が大変強い。▼45億年前に生まれた地球は月を持った後、生物を産み進化させてきた。ソロンにも生物はいるが、発生時期はだいぶ遅れ、進化のスピードも、大気中に二酸化炭素が濃かったので遅い。植物は葉が小さく地をはうように生きる。動物が出現しても人類のように発展するかどうか。▼さて、水星や金星にはない月が、なぜ地球にはあるのか。太陽の周りを回っていた無数の宇宙塵が衝突を繰り返して凝集し、地球や他の惑星が出来た後、異常に尖った楕円軌道で凝集した火星大の微惑星が、若い地球にある時衝突。そこから飛び散ったかけらが、かつて地球が出来たのと同じ仕組みで固まっていって月になった。▼月の産みの親たる彼の異常軌道の微惑星は、何兆キロの彼方から飛来したのだが、その形成がほんの10センチずれていたら、地球とは衝突しなかったとか。何たる確率。あなたと私が今ここにいるのは、実に偉大なる偶然の業としか言えない。(E)

 

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