博報堂DYメディアパートナーズ情報開発部長 井徳 正吾(いとく しょうご) さん

2004.04.25
たんばのひと

江戸時代に熱き思い
博報堂DYメディアパートナーズ情報開発部長 井徳 正吾(いとく しょうご) さん (神奈川県横浜市在住)
 
 1952年 (昭和27年) 氷上町生まれ。 柏原高校、 早稲田大学第一文学部卒業。 博報堂に入社。 大阪支社勤務に始まり、 89年より東京本社。 03年、 メディア部門の独立に伴い現部署へ。 以来現職。
 
 企業の商品開発から広告宣伝までアドバイザーを請け負う。 これまで特に食品関係の新商品開発を多く手がけ、 今でもロングセラーを続けるものも。 なじみのある名前がいくつか挙がったが 「わが社は黒子に徹するという企業理念があるので、 具体的な商品名は書かないで」。 ネーミングやコマーシャルだけではなく、 味付けや容器など製作の初期段階からかかわるのだそうだ。
 最近はマーケティングに関する本を出版して、 側面から会社のPRをしている。 昨年発売した 「江戸時代を振りかえれば明日のビジネスが見えてくる」 は、 長い間温めていた江戸時代に対する熱い思いを書いたもの。 「江戸時代の庶民は、 教えられてきたのとは違って、 精神的に豊かで幸せな生活をしていたと思います」。 それは日本を訪れた西洋人が残した記録に見られる。 「貧困の不潔さが無く、 品性が高い。 無邪気で好奇心が強い」 などだ。
 たとえば江戸時代に丹波を訪れた中沢道二という心学者は、 7日間の遊説に6900人もの人を集めた。 それほど文化のレベルが高かったという。 「西洋人には別天地に見えたようです」
 この本を出してから講演依頼があちこちから来て、 たとえば 「江戸時代に学ぶ明日の生き方」 という題で月に2、 3回スピーチをする。 「こんな世の中だから、 日本人として自信を回復したいのですね。 欧米の真似をしていては日本人の未来はない」 ときっぱり。
 小学校のころ、 漠然と物書きになりたいと思った。 最後まで新聞か雑誌記者またはコピーライターと迷ったが、 広告会社に勤めることになって、 ずっとクリエイティブな仕事ができ幸せだという。 「日ごろ流行の先端を行く、 上昇志向の人々に囲まれて仕事をしている僕にとって、 丹波は 『こういう幸せもある』 と価値の多元性へ引き戻してくれる、 大事な故郷」

(上 高子)

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