サラリーマン時代に単身赴任した米国生活をもとにした小説 「ミシガン無宿」 (碧天舎出版) で、 52歳にして作家デビューした。 病気をきっかけに33年勤めた会社を辞めてから、 約1年。 人生の舵を大きく切り換え、 ペンの道の第一歩を踏みだした。
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「退職のきっかけになった病気は、 心筋梗塞です。 2004年の2月に発症しました。 それまでタバコは吸うわ、 酒は飲むわの不摂生な生活だったので、 来るべきものが来たわけです。 5時間半の手術を受けて、 3カ月入院しました。 その時、 結婚後初めて妻とゆっくり過ごしたんですが、 『精一杯走ったので、 この辺でいいんじゃないか』 と退職を決めました。 妻は反対せず分かってくれました。 ありがたかったですね」 「作家を志し始めたのは、 40歳くらいから。 書くことは嫌いではなかったですし、 本も好きでたくさん読んでいました。 それで、 『自分でも書けるのでは』 と。 定年後にめざすつもりだったんですが、 病気で早くなりました」 「『ミシガン無宿』 には、 赴任当時の経験をほとんどそのまま書きました。 ただ、 思い出を懐かしがるだけのものは書きたくなかった。 日本の技術の凄さや、 信念を貫くことなどを込めたつもりです。 16日から書店に作品が並び始めましたが、 それを見るまでは本当に出るのかと半信半疑でしたね。 今は、 『やっとこぎつけた』 という思いです」 「会社では、 自社で使う機械や生産ラインの設計製作に長く携わり、 100数10台の設備を設計しました。 作家として100数10冊は無理でも、 20冊は本を出したい。 日本で純粋に作家で生計を立てているのは、 10人ほどと言われています。 非常に厳しい世界なのは分かっていますが、 とにかく土俵にあがらないと。 読者をうならせる文章を書いていきたい」
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部屋には本棚とともに、 バイクと歌手矢沢永吉のポスター。 50歳を超えた今でも、 青春時代の若々しい心を持ち続けている。 不良中年を自認する新人作家の活躍を期待したい。 「ミシガン無宿」 は主要書店で発売中。 定価1050円。 丹波市市島町与戸。
(P)