師籍60年の舞踊会を開く 藤間 勘有 (ふじま かんゆう) さん

2005.05.26
たんばのひと

 藤有会を主宰する藤間勘有 (本名・阿部百合子) さんが師籍60年記念の古典舞踊・新舞踊の会を29日、 春日町文化ホールで娘の藤間有晃 (本名・阿部容子) さんと開く。 舞踊一筋に生きてきた勘有さんと社中の心を一つにした舞台が見られそう。


  「数えで85歳になりました。 京都から終戦後に故郷の春日町上三井庄に帰り、 柏原に出稽古を始めたのが私の丹波での舞踊人生の出発点でした。 それから、 数年後に黒井に移りました。 当時は、 踊りを習うということが、 今のように十分理解されていない面もあり、 人目をはばかって、 エプロン姿で稽古に来るお弟子さんたちもありました」   「私の指導はスパルタですよ。 藤間流は、 古典が中心ですので、 古い時代に応じた所作を考えなければなりません。 蛇口をひねると水の出る時代。 つるべで井戸水を汲 (く) む場面は、 今の若い人には理解できないでしょう。 お茶を入れる作法一つにしても大切です。 体がその所作を覚えこむぐらい稽古を積まないと古典舞踊は上達しません」   「今でも強く記憶に残っているのは、 40年ほど前の海外公演。 フランス、 イタリア、 英国で日本文化を紹介する文化使節団の一員として日本舞踊を披露しました。 公演の合間に一人で色々な所に出かけましたが、 海外では誰も頼らず一人で行動しなければなりません。 自分の考えで行動する力を身につけられたのも海外経験のおかげだと思います」   「私は、 高齢と持病があるため、 週末には、 染色作家でもある娘が京都から帰って来て、 私と一緒に指導しています。 これからも正確な日本舞踊を伝えていきたいと思います」


 戦時中は陸軍病院の慰問の経験もあるという。 「今の時代は自由で幸せ」 という言葉に実感がこもる。 「上手になればなるほど自己研さんを怠らないように」 と弟子に諭す一方、 「芸を磨くことにつきる」 と、 今後の目標も常に前向き。 モットーである 「終着駅なき芸の道」 に向かって精進してほしい。 丹波市春日町黒井。 84歳。

(臼井 学)

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