「弟も毎日元気で努力していることと存じますが、母上様よりよろしくお伝え下さい。(中略)小兵のことは、本当に本当にご心配なく下さい」。家族にあてたごく普通のあいさつだが、その手紙の背景を思うと胸がつまった。 書かれた場所は、1945年3月の南方戦線。送り主は氷上町から出征した23歳の海軍兵で、フィリピンで戦死した。この兵士が家族に送った軍事郵便約30通が、氷上町立図書館で展示されている。 「元気おう盛にて、奉公いたしております」(43年8月)、「丹波男子の意気を示す決心です」(44年1月)など、意気盛んな文面が並ぶ。弟には、母親に孝行を尽くせ、と兄らしい小言も。聞けば、この家族は父親を早くに亡くしたという。故郷に母親を残して従軍する辛さが、家族を心配させまいとする言葉の数々になったのか。 手紙は戦況の悪化とともに途切れがちになり、冒頭の手紙を最後に消息が途絶えた。終戦から2年後にようやく死亡通知が届き、集落葬が営まれた。同図書館はそれらの資料も展示し、戦争に翻弄された家族の姿を伝えている。展示は8月末まで。ぜひ足を運んでほしい。(古西広祐)