昨年も、この時期に同じようなコラムを書いた。柏原町の旧家の取り壊しが止まらない。3セクのTMOが街なみの保存を呼びかけ、住民組織が「街なみ協定」を結び、町は協定に沿った新改築に助成をしているにもかかわらず、だ。 家は本来個人の財産だ。それが集まってできている「街なみ」とは一体何なのだろう。家に対する人の好みや夢はそれぞれ違うし、また同じ人でも年を経て価値観が変わることもある。外部の人が、自分自身は「まち」の制約を受けたくないが、「よその街なみ」は残してほしいというのは身勝手過ぎる。また私自身、同じテーマで書いていても、以前より個人的事情を大事だと考えるようになっている。 それでもやはり、立派な古い家を壊すのはもったいないと思う。そこに積み重ねられてきた「時間」は二度と取り戻すことができないから。 昔から街なみに対して共有財産という意識を持っていた住民もいれば、中心市街地活性化の取り組みに共感し、関心が高まったという人もいる。行政には一層の熱意が求められるだろう。街なみ保存の機運が、古い家が失われるスピードに負けないことを祈りたい。(徳舛 純)