化石発見者の村上茂さん講演

2007.05.29
丹波の恐竜

 丹波文化団体協議会の記念講演会が丹波の森公苑で開かれ、 丹波市山南町で恐竜化石を発見した同町下滝の村上茂さんが 「恐竜発見と地域づくりの夢」 と題して講演した。 要旨を紹介する。

 山南町で見つかった、 ティタノサウルス類とみられる草食恐竜はその化石から背丈が5メートルぐらい、 頭から尻尾の先までが 20メートルを超えるとみられている。 1日に食べる量は、 牛の150頭から200頭分ぐらいの食事量に匹敵する。 1億3千万年前はそれだけ食物が豊富にあったのだろう。
 大学時代の友人で、 化石に関心の深い足立洌君に誘われたことが、 化石発見のそもそものきっかけになった。 定年になり、 時間があり余ったころに 「健康にいいから」 と化石調査に誘われた。 彼は、 私が小さいころによく遊んだ篠山川流域でも調査をし、 私の地元をよく知っていた。 これは負けられないと、 昨年6月から一緒に調査を始めた。
 恐竜化石を見つけたのは、 8月7日のこと。 何かを見つけ出さなくてはという使命感はなく、 遊び気分だったが、 赤い泥の層に灰色の石のようなものを見つけた。 周囲の泥を落とすと、 棒状のものがまっすぐに突き刺さっていた。 これが肋骨だとわかったのは、 後になってからだ。
 足立君がこの日、 持ち帰って図鑑やインターネットで調べた。 その日の夜9時ごろ、 足立君から 「すぐに来てくれ」 と電話がかかってきた。 彼の部屋に行くと、 「ひょっとすると」 と言う。 恐竜の化石が丹波で見つかなんて信じられなかったが、 恐竜としか考えられなかった。
 2日後、 足立君と二人、 「母ちゃんのためならエンヤコーラ」 などと声をかけあいながら、 6時間半ほどかけて掘り出し、 15センチぐらいの肋骨4本を持って、 三田市の人と自然の博物館に持って行った。 博物館の三枝先生に見せると、 とたんに表情が変わり、 「これはすごい。 本物です」 と言われた。 びっくりされた様子を見て、 こちらがびっくりした。 研究室の人が集まって、 大騒ぎになった。
 9月27日から三枝先生らと試掘を始めたが、 それまでが大変だった。 足立君と交代で発見現場に行き、 現場が荒らされていないか巡回した。 だれにもしゃべられないから、 家族の者にも疑われた。 この1カ月半は本当に苦労したが、 試掘をすると、 わずかなスペースから血道弓や尾椎骨などが見つかった。
 2月15日から本発掘が始まった。 みなさんの期待も大きかったが、 何も出てこず、 だんだん心配になり、 足立君と 「きのう眠れたか」 などと話したものだ。 やがて骨片が見つかったときは、 ほっとしたが、 それからは骨片が見つかるばかり。 「また骨片か」 というありさまになった。 そうするうちに、 尻尾が完璧な状態で出てきた。
 丹波竜は、 大きさ、 保存状態ともに日本一だ。 自然教育に生かすなど、 恐竜を生かしたまちづくりが進んでいけばと思う。 そうした地域づくりに微力ながら努力したい。

関連記事