死刑制度

2008.06.05
丹波春秋

 長崎市長選挙の最中に現職候補を射殺した暴力団員に、同地裁で「死刑」という厳しい判決が下された。4月には山口県光市での母子殺害に対し、広島高裁の差し戻し審で「無期懲役」が死刑になった。▼最近は「人を殺してみたかった」などという、やりきれないような事犯が頻発し、テレビを見ながら「こんな奴、死刑、死刑」と口走ったりすることがある。裁判官もそのような世間の傾向を敏感に受け止め出した。95年の「地下鉄サリン事件」が1つの契機になったように思う。▼しかし一方では、「どんな犯罪者であれ、国家権力が強制的に生命を奪うのは悪」という「死刑廃止論」も根強い。哲学的な問題になるので、軽々には論じられないが、世界を見渡すと、先進国で死刑制度を残しているのは日本とアメリカ(1部の州は廃止)だけだ。▼フランス大使館の人が篠山鳳鳴高での講演で「日本が仮にヨーロッパにあったとしても、EUには加盟できない。予算の赤字が加盟基準より多すぎるのと、もう1つは死刑があるからだ」と話していた(本紙5月15日号)のは、ショッキングだった。▼ヨーロッパが正しいのか。日本が正しいのか。ともあれ来年、裁判員制度が始まると我々誰もが、もしかしたら「無期か、死刑か」と、具体的に判断を迫られる機会に直面し得る。(E)

関連記事