丹波にも不況の波 「派遣切り」も

2008.12.28
ニュース

 世界的な経済不況の波が丹波にも押し寄せている。 円高の影響もあり、 自動車部品に関連する企業は、 受注が激減し、 厳しい経営状況に陥っている。 派遣社員の契約を打ち切る企業も相次ぎ、 雇用情勢の悪化も進んでいる。 「バブル崩壊時以上の厳しさ」 「先が見えない」 ―。 関係者からは悲痛な声が聞かれる。 (芦田安生、 徳舛 純)
 丹波市内の女性 (31) は11月末で派遣先の会社から契約打ち切りを宣告された。 定時前に仕事がなくなって帰社したり、 平日でも休みになる正社員の姿から 「相当厳しい」 ことを実感できたが、 急な契約打ち切りに 「会社の都合でいきなり切られても。 早くに知らされていれば次の仕事も探せた。 でも、弱い立場の派遣は『分かりました』と言うしかない」 と複雑な心境をのぞかせる。 12月から新たな職を探しているが、 自分の条件に合う所は見つからない。「子どももいるし、 家のローンも…」。 不安な毎日が続く。
 篠山市内の自動車部品加工会社は8月、 いきなり親会社から減産を言い渡された。 毎月1割ペースで受注が減り、 今月には5割まで激減。 20人近くいた派遣社員の継続契約を今月いっぱいで打ち切ることを決めた。 「背に腹は替えられない。 うちとしても技術を教えて育てていたので残念なのだが…」 という。
 丹波市、 篠山市の自動車関連部品製造業では10月以降、 生産計画の見直しに追われ、 結果的に生産量を2―3割減らしたところが多い。 あわせて残業をなくし、 ラインの一部停止、 操業時間の短縮などの体制を見直した。 来年1月には生産ラインを一部止めるため、 10数人の従業員が1週間―10日間の自宅待機に入る社もある。 また、 生産量激減に伴い、 派遣社員の契約打ち切りを段階的に実施。 丹波地域以外にある工場も含め、 全派遣社員との契約を打ち切った社もある。
 丹波市内の人材派遣会社によると、 同市と篠山市内に900人ほどの派遣社員がいるとみられ、 そのうち300人以上が年内から1月末までに契約が打ち切られる見込みという。
 10月ごろから、 特に自動車部品製造業を中心に派遣社員の契約打ち切りが舞い込み始めた。 「どの社も契約打ち切りが急だった」 と言う。 契約社員に任せる仕事が契約期間まで続かず、 実働はストップし、 賃金のみを支払うケースも珍しくないという。 正社員に手をつけざるを得ない状況の企業も見られるという。
 人材派遣会社タイトワークの山田志延社長は 「求人はゼロに近い。 急な契約の打ち切りは、 派遣社員にとって納得できるものではないが、 企業自体がそれだけ深刻な状況に陥っているということ。 出口が見えない状況だ」 と話す。 就業先の確保やアパートの貸与などの支援策をとりながら、 正社員の紹介をメーンにした事業展開もはかる。 「人材派遣業自身のリスクが高まっている」。
 別の人材派遣会社の所長は言う。 「丹波地域はもともと企業数が少ない。 市外に職を求める人が出始めるとますます過疎化が進み、 負の連鎖が強まる」。 篠山市内の自動車部品関連会社は15年ほど前から毎年、 地元の高校生を採用しており、 来春も3人を予定している。 「内定取消しはできない。 ただ、 さ来年の求人は分からない」 と話す。
 今後の見通しを篠山市内の工場関係者は 「あと1年はこの状態が続き、 部品在庫が底をついた2年目に徐々に上向いていくのではないか」 と話す。 丹波市内の工場では 「アメリカの経済対策などが動き始めると市場も動き出すはず」 と期待するも 「そこまでもつかどうか」。 別の工場では 「物の価格が下がり、 ガソリンも下がったのになぜ市場が冷え込むのか。 原因がはっきりしない不況だけに、 見通しはなおさら分からない」 と話す。
 丹波市工業会の足立俊行会長は 「来年にかけて、 一層厳しさが増すのではないか。 世界的な問題であり、 『上向く時期を待つしかない』 としか言えない」 と先行きを厳しく見つめている。

関連記事