小児科を守る会の2年「病院に行く、その前に」

2009.04.23
丹波の地域医療特集

  「いつでもお医者さんに診てもらえるのが一番安心だけど、 診る側に立つと、 つらい。 急なけがに備え、 手元に冊子を置いておきたい」。 北海道むかわ町穂別地区に住む2歳から10歳の4児の母・林清美さんは言う。 人口3400人ほどの穂別地区。 まちで唯一の医療機関・国保穂別診療所の医師の過労を緩和するために守る会が作った冊子 「病院に行く、 その前に」 が、 小学生以下の子どもを持つ全ての家庭に配布されている。
 22日に市内の11保育園などに配布した沖縄県沖縄市は、 若手医師の間で全国屈指の人気を誇る沖縄県立中部病院の小児科医のすすめで購入した。
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  「吐いた」 「熱が出た」 など、 子どもに見られる代表的な症状をたどり、 「大至急受診する」 「しばらくようすを見る」 など、 緊急度をはかる。 開業医と病院を適切に受診する判断目安にと、 丹波市内の子どもを持つ世帯向けに作った冊子はテレビや新聞で紹介され、 佐賀県を除く46都道府県から少なくとも500件以上注文があり、 3万部を発行した。 表紙のイラストは、 守る会の美術担当・山下さつきさん (30) が、 チャートづくりは、 足立誠子さん (33) が手がけた。 行政のお仕着せでない 「母親の手作り感」 と、 実用性が評価されており、 発売中の 「AERA with Kids」 (朝日新聞出版) の付録チャートも同会のチャートを参考にして作られた。
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 だが、 ほとんどのメンバーに売れている実感はない。 先方とのやりとりは事務局がメールを交わすのみで、 冊子の山を見たこともない。 発送を一手に担ってきた中澤美香さん (34) は別だ。 「会社に勤めて発送作業しているみたいだった。 途中まではどこに何冊送ったのかデータを取っていたけれど、 1日で100件注文が入ったことがあり、 入力はあきらめた。 普通のお母さんがそこまでする必要もないと思って。 疲れたので発送担当を代わってもらう」 と笑う。
 奈良県生駒市、 兵庫県豊岡市、 新潟県村上市、 島根県大田市では、 市が守る会の冊子を配布。 宮崎県延岡市、 日向市や愛媛県新居浜市は、 会の冊子を取り寄せ、 独自の冊子を作った。
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 両親、 祖父母、 開業医、 病院、 保育園、 子育てサークル、 議員など、 注文主は多岐にわたる。 友人や知人に配りたいと注文する人もいる。 3―4件に1件の割合でメッセージが添えられている。
  「初孫を預かる時の参考にしたい」 (富山県魚津市の男性)、 「祖父母が騒ぎ立て、 救急車を気軽に呼びかねないので、 症状把握の目安に」 (岐阜県美濃市の母親)、 「退院のお祝いにプレゼントしたい」 (長野市の産婦人科)、 「頼るお医者さんも近くになく、 いつも不安に悩んでいる」 (香美町の3児の母)、 「東京の隣接地でも医師不足は深刻。 市民の自覚で子どもたちと医療従事者を守りたい」 (千葉県浦安市の母親) ―。

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