明日20日は「敬老の日」だが、さて人は、いくつから老いの域に入るのか。手元の国語辞典で「初老」をひいてみる。すると、「もと四〇歳の別称。現在では六〇歳前後を指す」とある。▼初老に入る年齢が延びたのは、平均寿命が延びたのが一番の要因だろうが、昔と比べて今は、精神的年齢からしても40歳にして初老はまだ早いことも要因ではなかろうか。孔子によると、「四十は不惑」の年。人生問題で惑いがなくなり、自分の進む道に確信が持てる年齢だ。はたして今の40歳で不惑の自覚を持てる人はどれほどいるか。▼アメリカの大統領、リンカーンにも40歳にまつわる逸話がある。友人がある男を秘書として推薦した。しかし、リンカーンはいっこうに取り上げない。業を煮やした友人が理由をただすと、リンカーンは「顔が気に入らない」と答えた。そして「人間、40歳を過ぎたら、その顔に責任を持たねばならない」。▼人間が完成するのに40歳は十分な年齢である。完成していると、おのずと顔に現れる。これがリンカーンの持論であり、人を見る基準だったのだろう。▼「老」という字は「なれる」「ねれる」と読む。すると、老人とは、人間的によく練れた人を指すことになる。初老に入る年齢が昔と比べて20歳も延びたのは、この点からも納得できる。(Y)