山に入って薪をこしらえ、お客のところに配達している市島町の塩見さん親子の奮闘ぶりが、9月30日付の丹波市版で載った。父親と12歳、10歳の息子2人。お金を稼ぐ苦労を知ってほしいと、父親が息子を誘ったという。黒字分は、息子たちの給料にもなる。▼「配達がおもしろい。自分たちで木を伐ったと話すと、びっくりされる」「家に帰って給料をもらったらすごくうれしい」。新聞に載った子どもたちのコメントを読み、ほほえましかった。▼長く公立高校の教師をされていた諏訪哲二さんの指摘を思い出した。諏訪さんによると、今の子どもは「労働主体」として自立する前に「消費主体」として自立し、社会参加しているという。▼どんなに小さな子どもでも、店で買い物をすると「ありがどうございました」と店員に言われる。一定のお金を使った消費をすれば、子どもであっても大人と対等のサービスを受ける。心がまだ成熟していなくても、一人前扱いされる。▼手伝いなどの労働を通して家族や周辺の人たちに感謝されたり、ほめられたりして社会参加への扉を開くよりも前に、さっさと消費行動を通して社会参加している。この違いは大きい。労働と消費のどちらを入り口にして自立することが、子どもの成長にとって好ましいかは言うまでもない。(Y)