白鵬の連勝が止まり、69連勝の双葉山の偉業が改めてクローズアップされたなか、「木鶏(もっけい)」という言葉がマスコミで伝えられた。連勝の止まった双葉山が知人に送った電報に、「イマダモッケイ(木鶏)タリエズ」とあったのだ。この木鶏は、中国の故事に由来する。▼王のために闘鶏を養っていた名人の話。10日たって王から「もういいか」と鶏の様子を聞かれた名人は、「まだだめです。空威張りしています」。10日後、さらに10日後にも王から問われた名人は「相手にとらわれている」「かさにかかるところがある」との理由で、「まだだめ」と答えた。▼さらに10日後。名人は「そろそろよろしい」と成長を認めた。「相手が挑戦しても少しも変わりません。ちょっと見ると、木彫りの鶏のようで、徳の力が充実しています」。これが木鶏の由来だが、闘鶏だけでなく人間世界にもあてはまる話だ。▼空威張りをする。相手にとらわれ、むやみに気張る。かさにかかって相手を責め立てる。強引に相手をねじ伏せようとする。日常生活の中で、またテレビのニュース映像の中でそんな場面に出くわすことが少なくない。▼速射砲のように質問を浴びせ、非難する仕分け人たちを映した事業再仕分けの映像を見ながら、「木鶏」という言葉がふと頭をよぎった。(Y)