篠山出身の心理学者、河合隼雄さんが「自立と依存の関係」についてまだよく理解していなかったころの体験としてこんな話を紹介している。スイスでの体験だ。河合さんは、ヨーロッパの人たちは自立的だから、親子関係は薄いものに違いないと思っていた。しかし、スイスに行ってみると、その認識がくつがえされた。▼親子が離れて暮らしている場合、電話で話し合ったり、贈り物をしたり、さらには会食したりする機会が日本人よりはるかに多かったのだ。不思議に思った河合さんは、親子関係をじっくり観察した。そして気づいた。「自立しているからこそ、よくつきあっているのだ」(『こころの処方箋』)。▼親から自立することは、それまでの依存関係を排除することでは必ずしもない。自立と依存は対立するものではなく、必要な依存は自立を助ける。自立とは、孤立ではないからだ。▼あすは「成人の日」。大人の仲間入りをした若者には、自立への自覚が問われるが、自立とは、親をはじめとした周囲の人たちに自分がどれほど依存しているかをしっかり自覚でき、感謝できることだと知っていてほしい。▼成長の段階で必要な依存は受け入れていい。とはいえ、必要以上に依存し、その自覚も感謝もまるっきりないとなると、尻を蹴飛ばしたくなる。(Y)