「3月の風に想いをのせて 桜のつぼみは春へとつづきます」(レミオロメン「3月9日」)。別れと出会いの季節。そして3・9(サンキュー)は「ありがとう」の日でもある。▼それを知ったのは、NHKアナウンサーの村上信夫さんから「言えなかったありがとう。」(幻冬社刊)という本を贈られてのこと。「きょうも元気でわくわくラジオ!」という担当番組(当時)で、そういう題でリスナーから募集した便りが収録されている。▼「『手に余る難産にての人工分娩。女子也、九百匁(もんめ)、…明治の時代なれば母子共に死亡せしに相違なし。医師その人を生命の救主の如く感ず』という日記を読むたびに、7歳で死別した父に感謝」という大正生まれの老女。▼亡き家族に宛てた言葉が多い中で、「勝利が目前だった決勝戦最終回、自分のエラーで逆転サヨナラを喫したが、少しも非難がましいことを言わなかったナインに」、「大雨の日、交差点でエンストを起こしてパニックに陥った自分を助けてくれた通りがかりの男性に」なども。▼そう言われれば筆者も、「あの時、もっときちんとお礼を言っておくべきだった」と思い当たることが、いくつもある。丹波は医師への謝意を示すことで全国に先駆けた地。3・9の日に限らず、何事にも思い残すことのないよう態度で示したい。(E)