アサヒビール醸造研究所主任研究員 岸本 徹さん

2011.08.18
たんばのひと

商品開発へ香り設計

(きしもと とおる)茨城県守谷市在住

 1974年 (昭和49) 篠山市小多田生まれ。 篠山鳳鳴高、 京都大農学部卒、 同大学院農学研究科修士課程修了。 アサヒビール入社。 2008年農学博士号取得。 博士論文は 「ビールに特徴的な香りを付与するホップ由来香気成分」。

  「日本のビールはおいしい」 と定評があるが、 原料の麦芽、 ホップとも日本産ではないという。 ホップは日本ではほとんど生産されず、 欧米からの輸入品。 岸本さんの仕事は、 「ビールに苦みと香りを与える 『ホップ』 の成分を解明して、 コントロールしながら香りを設計し、 商品開発に結び付ける」 こと。 生来においに敏感な岸本さんには天職と言ってよく、 「毎日、 やりがいを感じています」。

 日本のビールの特徴は、 「種類が多い、 ということでしょう。 それは、 他の製造業にも言えることですが、 価格や味など多様な消費者の要望に応えるため、 頻繁に新製品を生み出しているわけです」。 課税対策から生まれた第3のビールもそのひとつ。 「僕の推論ですが、 日本語は語彙が多く、 微妙な味や食感の違いを表現する術を獲得してしまった、 というのも原因ではないでしょうか。 たとえば、 食感表現は他に比べて多いフランス語でも220語ほどですが、 日本語は擬音語や擬態語 (シャキシャキ、 ネチャネチャなど) も含めると440語にもなるのですよ」。

 7月から節電対策で、 350人が働く研究所は毎週火曜と水曜が定休日になった。 「3人の子供と接する時間が減って残念」。 昔から課外活動には積極的で、 小学1年の時から書道を習い、 マラソンのベストタイムは3時間37分。 篠山鳳鳴高校では生徒会長だった。 今は長男の小学校のPTA会長を務める。

  「子供の頃、 木や竹を使い工夫をこらして工作に没頭した智恵が、 今活かされていると思います」。 都会に出て、 海外とも付き合うようになって、 一層故郷の良さが分かってきた。 「僕の性格の全ては丹波篠山で培われたもの。 やがては郷里に」。(上 高子)

 

関連記事