野田佳彦首相が、 全物品の関税撤廃を原則とし、 貿易やサービスの自由化をはかる環太平洋経済連携協定 (TPP) 交渉に参加する方針を表明した。 国論が二分する中で、 丹波地域の関係者はどう受け止めているのか。 反応を聞いた。
悪影響が心配されている農業や医療の分野―。 篠山市の大規模農家の男性経営者 (60) は、 「参加には反対だが、 参加した場合、 コメだけは守ってほしい。 少々高くても自国のものを買う意識が高まってほしい」 と話す。
丹波市内の男性農家 (41) は、 「北海道のように何百ヘクタールといった規模の農家なら影響があるかもしれないが、 われわれは土俵が違う」 と言い、 別の男性農家 (44) は、 「米の値段が下がるかもしれないが、 一過性のものになるのではないか。 品質や安全性が求められる中で、 消費者が安いものにすぐに飛びつくとは思えない」 と冷ややかだ。
丹波市医師会の田中潔会長が、 「将来的に混合診療の全面解禁になりかねないとして医師会は反対している。 市場原理主義は医療になじまない」 とする一方で、 同市工業会の足立俊行会長は、 「日本の高い技術力を海外に向けて発信するよい機会」 とし、 立場の違いが鮮明に。 ただ、 「トータルに考えるべきことで」 (田中会長)、 「全業種にわたってやるのがよいかという問題はあるだろう」 (足立会長) という点では一致する。
自動車用のコントロールケーブルを製造する兵庫ケーブル (篠山市北野) の園田真也社長のように、 「国内向けの生産が多いので、 現在のところ、 影響は少ないと考えている」 との声もある。 丹波市商工会の大地但会長は、 「今すぐ影響があるとは思えない。 むしろ丹波ブランドを強調するなど、 独自性が鮮明になるのでは」 と予測する。
同市内の男性商業者は、 「海外生産の安い商品と、 品質のよい日本のものを比較して買うことができれば、 消費者にはメリットがある。 ただ、 商業者にとっては生き残れるか否かという厳しい現実も出てくるだろう」 と話している。