篠山盆地の北方に連なる 「多紀連山」 を形成する峰の一つ 「西ヶ嶽」 のふもとで、 根元幹回り約4・1メートル、 樹高約25メートルのトチノキの巨木が見つかった。 発見したのは、 同山中にある国内最大級のクリンソウ群生地の保護活動を行っている 「多紀連山のクリンソウを守る会」 のメンバー5人。 トチノキは、 寒い地方に生える樹種のため、 篠山市内には自生のトチノキはないとされてきたが、 メンバーたちは 「人里から遠く離れた山奥にトチノキを植える人などいないので、 自生のものに違いない」 と言い、 「気温が低い標高の高い場所で探せば、 ほかにも見つかるかも」 と話している。
5人は、 守る会会長の樋口清一さん (畑市) をはじめ、 石田敞一郎さん (魚屋町)、 石田莞爾さん (岩崎)、細見隆夫さん(東吹)、火置弘さん (南新町出身、 芦屋市在住)。
発見場所は、 クリンソウの群生地から西方向へ約30分歩いた標高500メートル付近の傾斜地。 トチノキの巨木は根元からすぐに直径約50センチの幹が8本に分かれて株立ち。 さらにそこから無数の枝が伸びており、 樹勢は旺盛という。
5人がクリンソウの群生地の状況を調査している最中に見つけた。 数年前に樋口さんがすでにこの巨木を確認していたが、 葉のない時期だったため、 「えらく大きな木があるわい」 という程度で通り過ぎ、 樹種の特定には至らなかった。
自生種は、 故・細見末雄さん (丹波市氷上町) 著書の 「丹波草木誌」 で、 丹波市青垣町の2例が報告されているものの、 篠山市内では未確認。 ただし、 植えられたものとしては、 川原と後川新田の大木が知られている。
県生物学会副会長でもある樋口さんは、 「このトチノキの周辺は植林地なので、 この木の存在を知る人は多くいるのでは」 と言い、 「トチノキは県内では但馬地方など、 寒い地域で見られる木であり、 さらにこれほどの巨木となると、 市の天然記念物に指定する価値は十分にある」 と話している。
写真・このほど多紀連山の西ヶ嶽のふもとで見つかったトチノキの巨木(写真・樋口清一さん提供)