携帯電話

2013.02.09
丹波春秋

 本紙6面の「祖父母の昔の暮らし」で、82歳の祖母が16歳だった頃を振り返り、電話をかけるすべを知らなかったと語っている。そんな祖母の話を聞き書きした世代の子どもたちにとって電話は当たり前の機器。7日付の本紙(丹波市版)によると、丹波市の中学生の4人に1人が携帯電話を持っているとあった。▼記事の中で気になったのは、携帯電話を持つ中学生のうち、1日のメール回数が「50回以上」という割合が12%あったことだ。用がなければメールしない身には、信じがたい回数だ。▼「子の携帯電話つながる異界のあるらしく深夜ひそかにわらふ声する」(俵万智『花咲くうた』)。異界とはうまく表現したもので、この歌の作者にとって我が子ながら別世界の住人に思えたのだろう。▼その別世界とは、常に人とつながっていないと、不安になる住人の世界なのかもしれない。自分のことが忘れられていないか、仲間外れにされていないか。そんな不安におびえるから、50回以上のメールだとすれば、孤独に耐える力が備わっているのかと、気になる。▼哲学者の池田晶子氏が、中学生らに向けて書いた『14歳からの哲学』で、孤独を愛せる人は自分を愛することができ、他人も愛せるとし、「孤独とはいいものだ」と書いている。孤独に耐える力を持ってほしい。(Y)

 

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