丹波市山南町上滝の地層、 篠山層群から発見されたティタノサウルス形類竜脚類 「丹波竜」 (通称) の化石は、 新属新種の恐竜で、 学名を 「Tambatitanis amicitiae gen. et sp. nov」 (タンバティタニス・アミキティアエ) とする論文を、 県立人と自然の博物館 (三田市) の三枝春夫主任研究員と池田忠広研究員が、 ニュージーランドの 「Zootaxa」 (動物分類学者のための査読付き国際学術雑誌) に投稿、 同学術誌の電子版で公表された。 竜脚類で学名が付いた化石は国内2例目。
写真上・丹波竜 (通称) は 「新属新種」 とする論文の内容を説明する三枝主任研究員
写真下・タンバティタニス・アミキティアエの全身復元図(©小田隆/丹波市)
論文の標題 (和訳) は、 「日本、 兵庫の下部白亜系産出の新種のティタノサウルス形類竜脚類 (恐竜類:竜盤類)」。 これまでに発掘された同恐竜化石の中から産出状態のよい約60点を基に、 他の恐竜化石とを慎重に比較検討した成果で、 「 (同化石は) 竜脚類、 特にティタノサウルス形類がどんな進化をたどったかを知る上で重要な新たな情報や、 示唆をもたらしている」 としている。
学名の 「タンバ (Tamba)」 は丹波地域を表し、 「ティタニス (titanis)」 はギリシャ神話に由来する「女の巨人」 という意味。 また、 「アミキティアエ (amicitiae)」 はラテン語で 「友情」 の意味で、 発見者の足立洌さん (71) =柏原町南多田=と村上茂さん (69) =山南町下滝=の友情を記念している。
体骨格と、 頭骨の一部である脳函 (のうかん) の両方が発見されている白亜紀前期 (約1億1000万年前) の竜脚類は世界的に少ないが、 日本産では最も情報量が多いという。
論文では新属新種とする根拠として、 ▽尾椎の棘突起が前方に向けて鋭くカーブしている (他では後方に向けてまっすぐ伸びている) ▽血道弓 (尾の左右の筋肉を隔てる骨) が長いもので約40センチもあり、 体長 (推定15―16メートル) の割に1・5倍ほど長い▽血道弓が棒状をしている (他では板状) ―など、 他のティタノサウルス形類竜脚類にはない8つの特徴があるとし、 尾椎と血道弓を詳細に記載している。
三枝主任研究員は、 「例えば血道弓は、 いろんな形状をしており、 同一固体の骨か、 何番目の骨かを確実にするのに時間がかかったが、 論文を書いていても矛盾が出てこなかった。 地殻変動の激しい日本で、 ここまでよい状態で化石が残っていたことは、 世界的にも重要だ」 と話している。
今後、 脳函にCTスキャンをあて、 血管の通り道を調べたり、 内耳の構造を調べることで、 平衡感覚や聴覚がどうだったかが分かるという。 レーザースキャナーを使って復元骨格の3D化にも取り組む予定。 また、 進行中のクリーニングが完了すれば、 それらに関する追加論文を出版する。
同博物館は、 新種新属であることの論文発表にあわせて、 20日から10月19日まで発掘された実物の化石約20点を展示する。
【化石発見者の声】
足立洌さんの話 学名に 「Tamba (丹波)」 が付いたのがよかった。 これだけ多様で、 保存状態のよい化石が見つかった篠山層群が世界的に知られるきっかけになる。 恐竜の進化と人間とのつながりを知ってほしいと思っていて、 特に地元の人たちに理解してもらう活動をしていきたい。
村上茂さんの話 これまではニックネームだけだったので残念に思っていたが、 新属新種だったことも含め、 学名が決まったことは、 戸籍に登録されたようなもの。 丹波市の地域資源としてはくが付いた。 地域としてもこれを歓迎し、 ますます地域づくりを盛り上げていきたい。
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