聖武天皇の勅願により天平10年 (738年) に創建された古刹である。 この寺の山麓にある薬師堂に中井一統の彫り物がある。 この御堂は文化年間 (1804年頃から) に再建され、 1809年から5年かけて彫刻が完成した。 文化10年の棟札が残っており、 中井丈五郎 (1818年没) の銘が書かれている。
棟札と質、 量のすばらしさから、 5代正忠、 6代正貞、 その弟清次良の合作と考えていい。 向拝の竜と天女の彫刻、 木鼻の唐獅子と獏(ばく)、 梁の片隅の竜、 籠彫(かごぼり)と称する多彩な華、 また御堂の周りの彫刻には、 唐獅子、 馬や中国の伝説の仙人たちのものが多い。 本殿の中にも、 木鼻のところに色鮮やかな象の彫り物、 その他多数の彫り物が満ち満ちている。
これほどの質、 量ともにすぐれた作品は、 中井一統のもののうちでも最高傑作のひとつと言っていい。
元高校教諭 岸名経夫