名草神社から少し下った所にある真言宗の名刹。 神仏習合の趣がそこそこに見られ、 訪れる人も多い。 境内に入って左後方に、 社殿が目に入ってくる。 少し石段を上がって近づく。 このあたりは山中ゆえ、 建物の損傷がやや進んでいる感じがする。
向背には、 立派な竜の彫り物があり、 さらに、 その上にも唐獅子の横たわった大きな姿が見える。 木鼻には定番の唐獅子と獏の重厚な彫り物が目に入る。 特徴的なのは、 そのうちの唐獅子が左右とも内側を向いて、 にらみを利かしていることである。 6代目中井権次正貞の技法のひとつである。
脇障子も分厚いもので、 造りはやや大まかとも思われるが、 翁が唐獅子に乗っている珍しいもので、 もう一方の脇障子には、 牡丹と鳥の図柄が彫り込まれている。 この妙見街道沿いの社寺の彫り物は、 正貞の作品がほとんどである。
元高校教諭 岸名経夫