山鳥依子さん

2015.01.31
丹波春秋

 取材を通して、魅力的な人達に出会ってきた。篠山市福住の女医、山鳥依子さんもその一人だ。山鳥病院や特別養護老人ホーム「山ゆりホーム」を開設するなど、地域の医療や福祉充実に尽くされた。▼旧西紀町生まれ。東京女子医学専門学校(今の東京女子医大)に進んだ。医者だった父親が、同専門学校を創設した吉岡弥生のような女医になってほしいと望んだかららしい。山鳥さんは、吉岡校長から患者に至誠を尽くすことを学び、医師になってからずっと至誠をモットーに診療にあたったという。▼卒業して1年後に父親が亡くなり、後を継いだ。8人きょうだいの一番上。医師をしながら弟や妹の面倒をみた。夫とともに山鳥病院を開業したが、山鳥さんが40歳代前半の頃、夫が急逝。途方に暮れ、心身ともに落ち込んだ。▼その頃、「子どもに高熱が出た」と駆け込んできた親子がいた。その親子が山鳥さんに元気を与えた。『そうだ。私にはまだするべきことがあった』。それ以後、日曜も夜も急患があれば飛んで行った。山鳥さんは晩年になっても、再起を促した親子に感謝していた。▼山鳥さんは、「父の明治書生気質を受け継いだのか、女性だけど『人生、意気に感ず』というところがあります」と話していた。しかし、その人生もとうとう幕を閉じた。103歳だった。(Y)

 

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