牧山橋から遠望すれば、 山頂がとんがったように見える延命寺山 (465) の麓にある。 創建、 慶長元年 (1596年) の高野山真言宗の古刹。 山南町和田地区西部の旧牧山五カ村およびその周辺が全て檀家で、 その数五百数十以上と言われる大寺だ。 静かな佇まいの集落から少し上がった所にある、 秋には紅葉の美しい寺院である。
少し高台にある寺院に向かって歩いていく。 山門がすぐ近づいてくる。 非常に垢抜けした大きな竜の彫り物が目に入ってくる。 年月の過ぎ越しから考えると、 鮮やかだなと最初に思った。 住職さん、 遠慮しいしい 「実は、 少し前に拭いて埃をとったんです」 とおっしゃった。 わびさびが少し薄れて、 残念な気がした。 木鼻にしつらえられた定番の唐獅子と獏の彫り物も、 その鑿 (ノミ) の技のすばらしさが遺憾なく発揮されている。 彫り物の数は少ないが、 8代目、 中井権次正胤の秀作である。
元高校教諭 岸名経夫