昔話

2015.04.11
丹波春秋

 人形劇を40年にわたって上演してきた篠山市の「みつばちグループ」が先ごろ、さよなら公演を行った。地元の昔話を掘り起こし、人形劇を通してふるさとの文化を伝えてきた同グループ。解散を残念に思うと同時に、「ご苦労さまでした」とねぎらいたい。▼兵庫丹波の森協会が発行した「丹波地方の昔話集」の10集目に河合雅雄氏が、「昔はいろりを囲んで、古老が語り手になって、村の人たちに昔話を物語り、聴き手たちはその地域独特の言葉で相槌を打ったといいます」と書いている。▼昔話を語る場となった「いろり」は、「囲炉裏」と書くが、民俗学者の柳田国男によると、これは当て字で、「いろ」は動詞の「いる」と関係があり、「すわるところ」という意味らしい。では、「すわる」の意味は何か。▼「すわる」は「坐る」「座る」と書く。坐は、土と、向かい合う二人の人から成る語。座の「广」は家の意味。河合氏が書かれたように、家の中で、人と人とが向き合って座りながら、昔話を語り、聞いている風景が浮かび上がってくる。▼河合氏は先の本で、「(昔話は)今や絶滅危惧種のようになった」と書いている。理由はいろいろあろうが、老若男女が一つ屋根の下で向き合って座る風景そのものが絶滅に瀕したことも、昔話の危機の一因であろう。(Y)

 

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