登山で特別な朝

2015.04.18
未―コラム記者ノート

 一週間で二度、黒井城址に登った。一度目は取材で、二度目は友人に誘ってもらったからだ。普段からランニングなどで体を(少しだけ)鍛えているつもりだが、なかなかどうして筋肉痛に見舞われた。
 一度目の登山は、夜明け前の早朝5時にスタート。現地に向かう車内では、何かにとり付かれたかのように「眠いわ…寒いし…」と一人繰り返していた私。しかし、登り始めて体が温まり出すと眠気もどこへやら。同行者が身に付けていたクマ除けの鈴が山中に鳴り響き、なんだかリズミカル。その音色に歩を合わせるように足を運んだ。
 道中では夜行性のフクロウと、春告鳥と言われるウグイスが同時に鳴き出すなど、夜なのか朝なのか何とも言えない不思議な気分だった。山頂にたどり着くと、普段暮らしている街並みが見渡せ、達成感からなのか胸が高鳴り、何気ない朝が特別な宝物のように思えた。
 滑らないように確実に歩を進める。その作業は着実に山頂へと体を押し上げてくれる。そう思うと、こんなに心強い一歩を感じたのは初めてかもしれない、というのは大げさか。(田畑知也)
 

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