稲荷神社(多可郡多可町中安田)

2015.04.22
中井一統特集

 創建時不詳。 祭神は大国主命など3柱が鎮座している出雲系の神社である。 播州平野の米所の人々が豊作を願って、 五穀豊穣の神である稲荷神社にいつの頃か変わっていったのであろう。 社殿は、 拝殿、 立派な幣殿そして本殿と続く。 近くの信心篤い老婦人の手によって、 拭き清められた社殿は塵一つない清楚なものである。
 ここで目に付くのは幣殿奥の虹梁の竜の彫り物である。 屋内ゆえに風化がなく、 美しい木肌が目に入ってくる。 目の後ろの赤い色もしっかり残っている。 その上の大きな獅子噛が真っ赤な顔をして下の梁に噛みついている。 隅の柱には定番の唐獅子と獏が睨んでいる。 注目は十二支の内の鶏、 虎そして兎が本殿の上部にしつらえられている。 兎が2羽体を前に突き出しているのは珍しい。 8代目中井権次正胤とその相方和久定吉の合作であり、 定吉は拝殿の竜も彫っているようだ。

元高校教諭 岸名経夫
 

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