自然の中で感動体験を
「子どもたちに自然の中で心を動かす体験をさせてやりたい」と、2011年に「丹波篠山自然塾むしクラブ」を立ち上げた。昆虫を介して、自然界の不思議やおもしろさなどを伝えている。また、NPO法人「こどもとむしの会」の理事や県立三木山森林公園の運営委員なども務め、ネイチャーガイドや動植物の生息調査を行っているほか、篠山市内の幼稚園や小学校の環境学習の講師として、地元の自然の奥深さを教えている。
枚方市出身。近所の野山を駆けずり回る昆虫少年だった。中学生のある日、山の中で紺色の地に瑠璃色の線が入った羽を持つチョウが、逆光の夕陽を浴びてひらひらと舞う光景に出くわした。「ルリタテハというチョウでしたが、あの時は『なんて美しい。絶対に新種だ』と興奮しました」と振り返る。さっそく自宅そばの大阪大学の学生寮に暮らしていた虫に詳しい学生のもとへ行き、捕まえてきたチョウの名前や生態、昆虫標本の技法の一つ「展翅(てんし)」を教わった。この体験が、より昆虫への興味を抱かせるきっかけになった。
当時、篠山市郡家にあった兵庫農科大学(現・神戸大学農学部)に進み、昆虫学を学んだ。卒業後は大阪で中学校の理科教師となったが、休日は昆虫を追い求めて丹波地域に通い続けた。1993年、篠山に移住した。
「虫たちにじかに触れることで、はかない命の存在に気づき、生態を知ることで自然の大切さが分かってくる。幼少期に野外での実体験で得たさまざまな感覚は生涯にわたって忘れない。そしてそれらは将来、社会を力強く生き抜く原動力になると信じている」。73歳。