察する能力

2015.09.26
未―コラム記者ノート

 10年前から生活を共にしている愛犬が、血便を出した。そんなことは初めてだったので慌てふためき、すぐに動物病院に担ぎ込んだ。診てもらうと、「便秘か切れ痔」。内臓系の疾患ではなかったと、胸をなでおろした。
 栄養剤の注射で胴回りと肩幅が大きくなった愛犬はすぐに元気を取り戻してくれた。人間でいえば熟年層に入る。これからも健康に気を付けてやらねばならないと思う。
 当たり前だが、犬は言葉が話せない。体調が悪くても「今日は調子悪いんや」とも言えない。嫌なことがあるとワンワンと吠えることはできるけれど、何が嫌だったのかは、人間が判断するしかない。だから、普段からの関係作りと「察する能力」が求められる。
 話を飛躍させると、人間も同じではないかと思う。相手の思いを考え、尊重し、その人にとってよりよい未来のために動くことが、良好な関係をつくる。声を上げないからと言って、つらくないわけではない。声を上げたならば、その思いをくみ取る。
 テレビの向こうで上等なスーツを着て騒いでいる人を見ながら思った。(森田靖久)

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