身近な「人」から

2015.10.10
未―コラム記者ノート

 新聞に登場する人と言えば、何かを成した人、何かを始めようとしている人などが多い。けれど、何気ない暮らしを送っている人も、話を聞けばドラマチックな人生であったり、他の人から共感を得ることがあったりする。
 本紙で毎週日曜日号に連載している「人」コーナーは、まさにそういった市井の人々に焦点を当てる。
 連載開始後、私が2度目に担当した方は、今年100歳を迎える“歌人”の小林ふみ子さん(4日号掲載)。夫の戦死、女手一つでの子育て、農業と、大変な苦難を乗り越えてこられ、その時々で「短歌を詠むということに支えられた」という。
 ずっと順風満帆という人はいない。うれしいことだけでなく必ずつらいことがある。そして、それを越えるための何かがある。その事実を改めて思う取材だった。
 インドの指導者、ガンジーは言った。「明日死ぬかのように生きよ。永遠に生きるかのように学べ」。小林さんの人生はまさにそうだった。著名な人の言葉でなくとも、身近に教訓を与えてくれる人がいる。 (森田靖久)

関連記事