天神社(豊岡市船町山際)

2015.11.05
中井一統特集

 豊岡大橋近くの山際に鎮座している。創建時不詳だが、祭神は菅原道真である。神域は比較的こぢんまりしたものだが、厳かな雰囲気が漂っている。
 本殿向背には、誠に力強く立体感溢れる竜の彫り物が目に入る。銅線を用いた髭も力強く、顎の髭も繊細にして鋭い歯が細かく彫ってある。本殿入り口の扁額の背後の蟇股(かえるまた)には、鳳凰と麒麟の姿が見える。特に、鳳凰の口の中の赤色が鮮明である。また尾垂木の上の竜も目の後部が赤く塗られていて目を引く。垢抜けした獏もいる。外部には本殿の懸魚の前、唐破風の屋根の上に大きな獅子噛が辺りを威嚇している。何といっても、ここの脇障子の彫り物が素晴らしい。欅でもいい部分の素材を用いている。木目が細かく、今でもつやつやしている感じである。8代目中井権次正胤お得意の武神が土豪と刃を交えているが、まるで隠し彫刻の如く、土豪の顔が識別しがたいほどの技量だ。
元高校教諭 岸名経夫
 

関連記事