創建は文禄3年(1594年)。祭神はイザナミノミコト、天照大神、第15代応神天皇。旧道をすぐ下りた所にあるが、地元の人の手入れが行き届いて、静謐な雰囲気が満ちている。
石段を上がった所の拝殿の背後の本殿に、立派な彫り物が数多く見られる。向背中央には、大きな竜が所狭しとその存在を誇示し、左下方を睨みつけている。いらかが際立って立ち上がり、大きな宝珠を3本の爪でしっかり握っている。木鼻の阿吽の呼吸の唐獅子と獏の共演も迫力がある。手挟みの牡丹の構図、その外部の庇にある長寿を願う海亀の様子も色は褪せてしまっているが面白い。上部の蟇股には、月の兎が波の上を奔っている。背面の蟇股にはユーモラスな猿が見える。脇障子には、中国神仙説話の牛に跨った翁と、酒杯を持った翁が見える。6代目中井正貞の巧みな彫り物である。
元高校教諭 岸名経夫