教師から猟師へ

2016.04.09
未―コラム記者ノート

 この春、9年間の教師生活に別れを告げ、自分で仕留めた鹿や猪を自らさばいて、その肉を売るプロ猟師に転身した男性を取材した。
 篠山市住山の西村大二郎さん(33)。狩猟で得た野生鳥獣の食肉「ジビエ」を扱う専門店を自宅の脇に開店した。
 西村さんから「教師を辞めて猟師になる。山一本でやっていく」と聞かされた時には正直驚いたが、同時に「うらやましい」という感情がわき起こった。私も若い頃、自然写真家に憧れ、野山をさまよい歩いた時期があったからだ。私の手にはカメラ、西村さんの手には銃。持ち物こそ違うが、足跡や食痕などから野生動物へとアプローチしていくその手法はよく似ている。私は夢半ばだったが、西村さんは持ち前の根性と行動力、奥様のバックアップによって店のオープンにまでこぎつけた。
 「獣害駆除の一翼も担えるこの商売。獣害に悩む農家と、鹿や猪の肉のおいしさを知った消費者の両方から喜んでもらえる幸せな仕事にしていきたい」と西村さん。自然を相手に生活を始めようとしている姿が、私にはまぶしく映る。(太治庄三)

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