ホタルの生活史

2016.06.09
未―コラム記者ノート

 暗闇の中をふわりふわりと1匹、また1匹―。初夏の夜、静まり返った川辺にホタルが舞う。
 ゲンジボタルの成虫の寿命は約10日間。その間に交尾・産卵をする。卵は川岸のコケに産み付け、産卵を終えたメスは死んでしまう。約1カ月後、ふ化した幼虫は川に入り、カワニナを食べながら300日ほど川の中で過ごす。5、6回脱皮を繰り返し、翌年の3―4月に上陸して土の中でさなぎになる。約1カ月後、羽化して成虫となり、初夏の夜を彩る。
 成虫は何も食べず、口にするのは水だけ。幼虫時代に食べたカワニナの栄養分だけで生き、それが尽きると寿命も尽きる。
 淡い黄緑色の灯火は彼らの懸命のラブコール。オスは飛翔しながら、草の上で待つメスを探し、光のサインで求愛する。与えられたわずか10日間で、精一杯、次代へ命をつなごうとする彼らの生活史を知ると、「静かに見守ってやらねば」との思いがわき起こる。
 ここは篠山市倉本の宮田川。晴れ渡る頭上の星空に負けないくらいの光の帯が川面に瞬いている。(太治庄三)

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