稲荷神社(丹波市氷上町桟敷)

2016.07.21
中井一統特集

 氷上町桟敷集落の山裾に鎮座する神社。境内は手入れや清掃がよく行き届いていて、好感がもてる。創建時は不詳。祭神は宇迦之御饌津神(ウカノミケツノカミ)で、元来は農業神。余談だが、狐は穀物を食いあさる鼠を捕食することや毛の色、尾っぽの形が実った稲穂に似ていることから、稲荷神の使いとなったらしい。
 神社の向拝を見上げると、立体感溢れる竜が目に入る。しかし驚いたことに頭がない。うがたれた2カ所のほぞに装着のはずの竜がいないのだ。残念の極みである。木鼻には阿吽の呼吸の唐獅子と象が、あたりを睨みつけている。木鼻の上部には、国家神道のエンブレムである菊の紋がしつらえられている。兎の毛通しには、大きな羽と尾っぽを広げた山鳥が見える。脇障子には、それぞれ鷹や大きな山鳥が彫られているが、やや甘い作りで弟子たちの造りなのかも知れない。8代目中井権次正胤の彫り物と思考される。
元高校教諭 岸名経夫

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