創建は古く、法道仙人によって推古天皇期(594年)に建立され、近くの五峰山光明寺(真言宗)と同時期で関係も深いと言われている由緒ある古社である。平地にある神社で10月に催される秋の例大祭は盛大なものである。巫女による舞殿での乙女の舞は華麗で、広い境内での太鼓屋台の乗り入れは勇壮なものである。
社の拝殿に近づく。上部に迫力ある竜の彫り物が目に入る。眼らんらんと、口を大きく開け、左上部を睨みつけているようだ。大きな3本の爪を立てて宝珠を掴んでいる。また垢抜けした鹿の彫り物もある。さながら生きているようだ。紅葉と松に取り囲まれた構図が秀逸だ。奥の方にある脇障子には、今にも飛び出してきそうな虎がいる。もう一方には、波の上を飛翔する竜の、彫り物の極地を行くように思える飛龍が目に入る。拝殿の竜の背後に、8代目中井権次正胤の銘がある。
中井権次研究家 岸名経夫