馬食と清正

2016.09.03
未―コラム記者ノート

 被災地支援活動取材のために訪れた2度目の熊本県。
 旧知のボランティア仲間たちが宴を催してくれた。ボランティアが寝泊まりするプレハブ小屋の小さな机に並んだのは、名物の馬刺しに馬ホルモン。絶品だった。
 そもそも、なぜ熊本は馬肉料理が盛んなのだろうか、と思って調べてみた。
 熊本城を築城した加藤清正。豊臣恩顧の戦国武将で、賤ヶ岳七本槍の一人だ。朝鮮出兵では虎狩りをしたことでも有名だが、出兵の際、兵糧が底をつき、仕方がなく軍馬を食べたそう。相棒でもあった馬。空腹に負け、泣く泣く食べたのだろう。
 ところが、これがうまい。しかも、滋養強壮効果もある。帰国した清正は、健康増進のため、領地である熊本で馬食を広めたのだという。知人の熊本の人たちがみんな元気な理由なのかもしれない。
 熊本城内の加藤神社に祭られている清正は、地震で崩れた石垣を見て何を思うのだろう。そういえば慶長伏見地震の折、真っ先に伏見城に駆けつけて秀吉を救出したのも清正。きっと領民を救いたいと思っているに違いない。(森田靖久)

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