旅する蝶々

2016.10.15
未―コラム記者ノート

 この時期、「アサギマダラ飛来」の記事が全国の新聞紙面をにぎわしている。弊紙でも10月9日号の篠山版で掲載した。羽を広げると約10、名前の由来にもなった浅葱色(淡い青緑色)のまだら模様が美しいチョウであるが、特筆すべきは、渡り鳥のように特定の季節になると長距離移動をするということだ。春から夏にかけて北上し、秋には南下するという“渡り”の生態を持ち、なかには2000以上移動する猛者もいるという。
 私がこのチョウの存在を知ったのは、15年ほど前。9月の終わり頃、山の中を歩いていたとき、木立の間をふわふわと縫うように飛ぶ姿にでくわした。うまい具合に樹冠から差し込む木漏れ日がこのチョウを照らし出し、その神秘的な光景にすっかり心を奪われた。
 体重はわずか0・3程度、寿命は羽化後4―5カ月だそう。なぜこんなにもかよわきチョウが、その短い生涯をかけて何千キロにもわたる壮大な旅をするのか。明確な答えはいまだ見つかっていない。私は、その生命力と自然の不思議にただただ感動を覚えるばかり。(太治庄三)

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