与謝野町の国道176号を北上し、石川地区の右側の山裾に鎮座する神社。創建時不詳。祭神は宇迦之御魂神(ウカノミタマノカミ、いわゆるお稲荷さん)。境内は整備が行き届いて、静謐な雰囲気が漂っている。出雲系の狛犬が迎えてくれる。社殿は覆い屋で守られて、風化がほとんど見られない。
拝殿向拝上の竜がまず目に入る。口を大きく開け、左上空を見上げている。ピンと立った舌先、黒色の銅線の髭、なめらかで力強いいらか、何といっても、赤く塗った目と宝珠の先端が鮮やかだ。木鼻の定番の唐獅子と獏も迫力があり、これらの目も赤色である。社殿の上部の隅には、獏に酷似した象の聖獣が見える。本殿の扉にも多彩な彫り物が施されている。頂点には、力士が梁を支えている。脇障子がいい。応神天皇の土蜘蛛退治と鷹を打ち据えている2面が見える。中井権次正胤の明治31年、44歳の力溢れ、垢抜けした傑作である。
中井権次研究家 岸名経夫