篠山市西吹集落を山裾の方面に向かって進む。神社への林間も、登って行く小道も清掃が行き届いて、地域の氏子の信仰の厚さが感じられる。辿りついたところの社殿はそう大きなものではないが、社殿の屋根は銅版でしつらえられている。創建は古く、奈良時代天平勝宝時代(750年頃)に創建された古市の見内(みうち)から、室町時代文明14年(1482)に分霊されたものである。祭神はイザナギ、イザナミ命。社殿の再建は文政7年(1824)。篠山藩主12代、青山公の時である。
拝殿の向拝虹梁に珍しく波の彫り物が見える。その上に躍動感あふれる力強い竜の姿がある。宝珠を真ん中に抱え、“いらか”を際立たせ、左下方を睨んでいる。木鼻の阿吽の呼吸の唐獅子と獏も力感溢れたものだ。持ち送りの牡丹の花もなかなかのものだ。手挟みには牡丹の花の中に鳳凰が大きく羽を広げている。6代目中井権次正貞44歳時の秀作である。
中井権次研究家 岸名経夫