省斎と草庵

2019.01.20
丹波春秋未―コラム

 最近、一冊の本を入手した。書名は『日々修養』。ふるさとの養父市八鹿町に建てた私塾「青溪書院」で門人を教え、“但馬聖人”と言われた儒学者、池田草庵の教えや歩みなどを平易な文章でまとめたものだ。

 草庵の教えの一つが「慎独」。一人でいる時も心を正しく持ち、行いを慎むことの大切さを説いた。そんな草庵を慕い、教えを請う門人は引きも切らず、明治11年に死去するまでの約30年間に、明らかになっているだけで700人近くを教えた。

 この本の著者は、地元にある「池田草庵先生に学ぶ会」の代表。昨年12月に発行されたばかり。この本を通して、青溪書院のある地元の小学校には草庵の銅像が立ち、児童は登校をすると、その銅像にあいさつしていることを知った。

 本を読み、「それにしても」と思わずにいられなかった。草庵より9つ年上で、草庵と親しく交わった“丹波聖人”はどれほど顕彰され、今も慕われているか、と。青垣に生まれ、柏原藩の藩政にも参画した儒学者、小島省斎である。

 省斎の高潔さ、残した功績は草庵に引けを取らない。かつて教育を重んじる気風を氷上の地につくったのも省斎によるところが大きい。省斎のみならず、丹波を築き上げた先人たちは数多くいる。そうした先人を称え、今に学ぶ姿勢を大切にしたい。(Y)

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