「自治会かかわりたい」ブラジル人一家の思い 入管法改正で定住外国人増加へ

2019.02.14
ニュース丹波篠山市地域

「自治会に積極的にかかわりたい」と話すアレシャンドレさん一家=兵庫県篠山市で

全国的に急増している在留外国人。法務省によると、昨年6月時点で、総数は260万人を超えている。昨年12月には「改正入管法」が成立し、日本で働く外国人は今後さらに増えるとみられるほか、在留期間が長くなると、労働者としてだけでなく、定住し、「住民」となっていく外国人も増加すると考えられる。そんな中、「自治会に積極的にかかわりたい」と考えている外国人一家が、兵庫県の内陸部にある篠山市内で暮らしている。日本人でさえ、自治会活動に消極的になる人が増える中、彼らはなぜ、そう考えるのか。一家を取材した。

日本文化好き 週に一度、神社や寺へ

「ようこそ。今日はよろしくお願いします」―。マンションの一室で、流暢な日本語で出迎えてくれたのは、ブラジル人のクルス・アレシャンドレさん(46)。ともに暮らすのは、妻のルシャナさん(45)、長男のカズオさん(18)、次男のケンジさん(17)、長女のアナ・ユミさん(13)だ。

ルシャナさんは日系2世のブラジル人。今回の入管法改正に関係なく、日本への定住資格がある。ただ、篠山市によると、自ら自治会にかかわりたいという外国人は「非常に珍しいケース」。すぐそこに近づく定住外国人増加社会へのヒントがあるのではないかと取材を申し込んだところ、快く引き受けてくれた。

一家は12年ほど前に来日し、愛知県で10年間、自動車メーカーの工場で働いた。その後、いったん帰国。再度、来日し、2017年11月から篠山市で暮らし始めた。これからも篠山市で暮らしていくという。

当初、アレシャンドレさんは、派遣労働者として市内の企業に勤めていたが、さらなるステップアップをと、市内の企業の採用試験に挑戦。面接などをへて、正社員として働きだした。

「篠山の人はみんな優しい。職場でもよくしてもらっているし、友達もできました。食べ物もおいしいですね」

ルシャナさんは両親の影響、子どもたちもほぼ日本で育ったことから日本語が堪能だが、アレシャンドレさんはブラジル生まれ、ブラジル育ち。流暢な日本語の源泉を尋ねると、「美空ひばり、スピッツ、Mr.children―。日本の音楽が好きで、日本語も覚えました」とほほ笑む。

アレシャンドレさんは、週に一度、神社や寺院に出向いて手を合わせる。今後は習字を習いたいというほど、日本文化に魅力を感じている。

隣近所と仲良くしたい 災害時の助け合いも

そんなアレシャンドレさん一家が、地域での活動にかかわりたい理由は、「仕事だけではなく、生活も大切。日本で暮らしていくならば、隣近所の人たちと仲良くさせてもらいたい。災害が起きた時にも助け合いたいから」という。

また、「私たちが地域の人と仲良くなることで、今、日本にいる外国人や、これから来る外国人も、地域に入りやすくなると思う」と話す。身をもって、定住外国人と地域との懸け橋になりたいという考えだ。

現在はマンション暮らしのため、自治会費が家賃に含まれている程度。「いつか一軒家を建てたい。そうしたら、もっと地域の人とかかわれるようになる」と将来を思う。

労働者ではなく、生活者として受け入れを

一方、受け入れる地域の体制は整っていないのが現状。外国人観光客も少ない地方の篠山市ならなおさらだ。

ある住民は、「外国の人に慣れておらず、急に受け入れるのは難しいと思ってしまう。外国人による犯罪の報道もあり、偏見があるのは事実。少しずつ、地域で知り合いを増やしてもらえたらいいが」と悩む。

外国人住民の支援を行っている篠山国際理解センター(同市宮田)によると、1995年に290人だった市内の外国人は、18年12月末時点で773人にまで増加している。国際結婚もあるが、多くが企業で働く技能実習生たちだ。

地域で暮らす外国人とのかかわりで、最も課題として挙げられるのがごみの分別。問題になっているケースもあるという。文化や習慣の違いが、定住への大きな壁になることを示している。

同センターの足立眞理子事務局長は、「在留外国人の人々を『労働者』ではなく、『生活者』として環境を整備する必要があるけれど、文化や言葉の問題、子どもたちの教育支援などにまだまだ課題がある。『生活者』であることを踏まえた国の施策や、外国人と地域住民が共生するための環境整備を期待したい」と話していた。

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