兵庫県篠山市がこのほど、「自殺対策計画」の素案を作成した。全国で年間3万人前後の自殺者が出る中、人口4万人弱の市内の年間自殺者は7―17人で推移。人数だけ見れば少なく感じるが、人口10万人あたりに置き換える「自殺死亡率」は全国、県の平均を大きく上回っており、直近3カ年では、県内41市町でワースト7位となっている。希薄になりつつあるとされる隣近所の人間関係がまだ残るにもかかわらず、自殺死亡率が高いことについて、市は、「関係が近いからこそ、相談しにくい環境があるのかもしれない」と推測。計画を基に、誰も自殺に追い込まれないまちの実現を目指す。
県や近隣市と比べても高い数値
市内では、2009年から17年までの8年間に、合計105人の市民が自殺。最も多かったのは11年の17人で、14年以降は10人を切るなど減少傾向となっているものの、16年には15人が自殺している。
10万人単位に換算する自殺死亡率は、15年から17年まで平均が23・3。全国、県はともに17・3で、丹波市(17・5)、西脇市(11・1)、三田市(9・6)など、近隣市と比べても高い数値を示している。
また、全国や県と比べて、同居人がいる割合が高い。50歳代や20歳代の男性の自殺者が多いのも特徴になっている。
原因や動機は精神疾患を含む「健康問題」が46・8%と最も多く、「家族問題」(12・1%)、「経済・生活問題」(9・7%)と続くが、さまざまな問題が複雑に絡み合っているという。
市は、同居人がありながらの自殺が多いことから、「家庭内でも孤立しているケースが考えられる」と分析。50歳代の働き盛りの人が自殺することについては、「中小企業が多く、大企業のようなメンタルケアの仕組みが少ないことが要因かもしれない」と推測する。
働く世代のメンタルヘルス対策を
高い自殺死亡率となっていることを受け、市は10年から職員プロジェクトチームを立ち上げたほか、ひきこもりやこころの相談窓口を開設したり、身近にいてサインに気づき、自殺を止める人「ゲートキーパー」の養成などに取り組んでいる。
19年度から25年度までの7年間を対象とした今回の対策計画では、働く世代のメンタルヘルス対策として、商工会と連携した自殺予防の啓発セミナーなどを推進する。
また、市役所内などで、担当課以外でも来庁者の異変を感じた場合は、相談につなげる体制を強化することや、高齢者やひきこもりの人の居場所づくり、若い世代への啓発などに取り組む。
計画は、国がすべての自治体に策定を義務付けている。
今後、市民から広く意見を募るパブリックコメントを経て、年度内に完成させる予定。
市地域福祉課は、「不安に感じることがある人がいれば、とにかく相談してほしい」と呼び掛けている。