2014年8月に兵庫県丹波市を襲った豪雨災害から5年を迎え、丹波市は18日、市内で復興5年イベント「和一処(わっしょい)」を開いた。東日本大震災、熊本地震、中越地震の被災地で復興にかかわる関係者を招いた「強くてやさしい安心社会シンポジウム」があり、災害を伝承していく意味などについて考えた。
丹波市豪雨災害は、2014年8月16日から17日未明にかけ発生。多いところで、1時間に91ミリ、降り始めからの累加雨量が419ミリを記録した。同市市島町前山地区を中心に山崩れなどを引き起こし、尊い1人の命が奪われた。
イベントでは、中越地震の震災伝承にかかわり、今は東日本大震災を伝承するため活動している山崎麻里子・中越防災安全推進機構アンバサダーが基調講演を行った。「先人たちは、被災の悲しみを子孫に味わわせたくないと災害の伝承をしてきたはずだが、私たちは忘れてしまっていたのではないか」と投げかけたあと、中越、熊本で起きた地震や、丹波市豪雨災害の伝承の取り組みを紹介。
東日本では、被災地に点在している震災遺構や施設をネットワーク化し、東北が一丸となって伝承していく取り組み「3・11伝承ロード」が今年春から始まり、現在、198施設が登録していると紹介。「伝承することで将来的に地域の活力を生み出すきっかけになれば」と話し、「災害伝承は未来への種まき」だとした。
続いてパネルディスカッションがあり、山崎さんや、丹波復興女性プロジェクト会「ぽんぽ好(こ)」代表の今井頼子さんのほか、中越、熊本地震の関係者の計4人がパネリストを務めた。
丹波市豪雨災害で、被害の大きかった同市市島町の女性7人で結成し、手作り弁当を販売するなどの活動をしている「ぽんぽ好」の今井さんは、「豪雨災害後、たくさんの人がボランティアに来てくださり、温かさが身にしみた」と振り返り、「楽しみながら活動している。仲間がないと活動できない」などと話した。
熊本で復興に取り組む佐々木康彦さんは、住まいの再建に向けて1年間で40回ほど会合を開いた集落もあったといい、「それぞれの思いを言葉にして伝え、お互いを理解しあうことが大切」と話した。また、中越地震の被災地、長岡市山古志で震災復興交流館の運営に携わる松井智美さんは、「地震から15年が経ち、これからは自分の幸せを求めてもいいのではと考えている。一人ひとりが幸せであれば家族も幸せになり、地域も幸せになる」と述べた。