兵庫県丹波篠山市大芋地区の藤坂集落にある藤坂春日神社の境内に、平安時代の歌人・和泉式部が同地区のことを詠んだと伝わる和歌を刻んだ歌碑が設置された。これまで伝承として地区に伝わってきたが、「証し」となる歌碑がなく、令和の改元を節目に自治会が整備。関係者らは、「和泉式部も詠んだ地ということで、地域おこしにつながれば」と喜んでいる。
歌碑(高さ約80センチ、幅約60センチ)には、「心ある 人は来てみよ 大くもなる 藤坂山の花のさかりを」の和歌を刻んだ。「趣を持った人は、大芋地区の藤坂山へ花の咲いているころに来てください」の意味だという。
小倉百人一首56番目の和歌「あらざらむ この世の外の思い出に 今ひとたびの逢うこともがな」を詠んだ和泉式部。「篠山の民話集」によると、和泉式部が丹後へ旅する途中、市内に立ち寄ったと伝わり、同市桑原地区では和泉式部が桑を植えたので、「桑原」になったという伝説や、旅の途中で宿した子・加祢(かね)を同市大山宮地区で産み、母子が別れた場所を「別れじの橋」や「鐘(加祢)ヶ坂」と呼んだとされるなど、ゆかりの地がある。
「心ある―」は、出典が不明ながら、和泉式部が詠んだ歌と伝わる。
住民で、歌碑建立に尽力した長尾勝美さん(71)は、「和泉式部が来た時に藤坂はどんな村だったのか。千年の昔に思いを馳せることにロマンを感じる」と言い、「藤坂には国重要文化財の妙見堂、巨木の大カツラ、由緒ある春日神社がある。この歌碑も地域の宝物として後世に残ることを祈ります」と話していた。